天は二物を与えた

徒然なるままにひぐらし、振込用紙にむかひて

【舞台】薔薇と白鳥【感想】

6月29日(金) 森之宮ピロティーホールにて

「薔薇と白鳥」を観てきました。

 

www.bara-hakucho.jp

 

八乙女光くん演じるクリストファー・マーロウと髙木雄也くん演じるウィリアム・シェイクスピアの運命的な出会いのお話です。

 

結論から述べますが、

雄也くんが凄かった(語彙力無)

推しという贔屓目なしに、彼の演技は強烈なものでした。とても初めてのストレートプレイとは思えない。恐怖さえ感じました。舞台は16世紀ごろのイギリス・ロンドンです。かなり膨大な戯曲のセリフや、言い慣れない単語が山ほどあるなか、マイクなしの演技、腹の底から声が出ていて驚きました。さらに、普段の雄也くんからは人格が変わったような声、動き、表情が彼の器用さを示していました。

 

 

 

 

(以下、ネタバレ含みます。公開時点で公演はすべて終了しているため、遠慮なく書きます。見たくない方は回れ右でお願いします。あと私は髙木担なので、雄也くんのことしか書きません。)

 

 

 

 

 

 

まず(シェイクスピアが出てきて)初めのシーン。ヘンズロウに台本を渡され、覚えてこいと言われてものの数分後、シェイクスピアは自分の役以外の人物のセリフもすべて覚え、見事に演じきります。このシーンですべてを圧倒されました。それまで八乙女くんがステージに出てきてからざわざわしていた会場が一気に静まりかえりました。シェイクスピアは、様々な役を全く違う人格で演じていました(セリフは難しすぎて一回では覚えてられない)。若いシェイクスピア本人は、雄也くんの可愛らしさが出ていて、「こいつあざといな...」と思ったのですが、役者シェイクスピアは今までに見たことがない雄也くんの姿でした。

 

次に、マーロウがシェイクスピアと初めて出会い、「台本の書き方を教える」ように言われたシーン。さっきの役者シェイクスピアとはうって変わって、途端に無邪気な様子でマーロウを慕うシェイクスピアがそこにいました。「マーロウさん!」と呼びかける可愛らしい声の裏に何かひそめていそうな彼の振る舞いが、とても不気味に感じました。

 

そのあと、2人が借金を取立てるゴロツキたちから逃げるシーン。実際取り立てられているのはマーロウですが、劇的なシーンに遭遇することで僕もマーロウさんのような素晴らしい劇を書けるようになるはずだ(無邪気)、とシェイクスピアも共に逃げるのです。その格闘&逃走シーンを見ていると、なんだか映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」を見ているような気に。特に、2人がそろって柵をくぐったり、机にうつ伏せたりして包帯ブラザーズをかわすところ。おもいっきり「呪われた海賊たち」の最後のどんでん返しのところにしか見えなかった(好き)。個人的にこの映画は大好きなのですが、無邪気そうに見えて何を考えているのか分からないシェイクスピアがジャックスパロウに重なり、勝手に悶えていました。

 この様子を見ていた劇団員たちは、次のような会話をします。

 

この舞台の間こんなにも楽しい様子のシーンが山ほどたくさんあるのに、この「薔薇と白鳥」は喜劇ではなく悲劇なのが何とも言えなくて、思い返すたびにヒヤッとします。

 

1幕ラスト、諜報員フライザーにより、隠されたシェイクスピアの一面が明らかになります。そのときの、跪き、上を見上げるシェイクスピアの表情にいつもの笑顔はなく、笑顔の裏に隠していた顔が垣間見えました(顔がめちゃくちゃカッコいい)。

 

 

2幕、1幕から3年が経ち、シェイクスピアは役者として、詩人として、ロンドンのスターとなっていました。それに対してマーロウは、3年間作品が書けないまま、落ちぶれた様子です。服装や髪型で対比されるだけでなく、言葉の節々、声のトーン、表情から、2人が変わってしまった様子が見て取れました。まるでそこにいないかのように扱われ、部屋の隅に立ち尽くすマーロウの表情は見ていてとても辛くなりました。

 その後のマーロウとシェイクスピアの2人の会話。最初に出会ったときとは全く違う、どこか赤の他人同士で会話をしているようなよそよそしさが感じられました。3年で、2人が変わり、距離ができてしまったようでした。シェイクスピアは地位と名声を手に入れて堂々とした立ち振る舞い、マーロウは自分が書きたい台本を書かせてもらえない、見てももらえない苛立ちと、書きたいという情熱が渦巻いている目でギラギラしていました。

マーロウは立ち去り、ジョーンがシェイクスピアのことを呼びに来ます。そのとき、1幕で出ていたお皿の話がもう一度出てきます。男と女は割れた皿の片割れ同士だというお話です。

ネッドとジョーンの結婚が腑に落ちていない様子のシェイクスピアシェイクスピア自身がジョーンを好いていたのもあると思いますが、それよりも、ジョーンが結婚したことでマーロウの居場所がなくなってしまったことを心配しているのではないかと私は思いました。ジョーンに対して、マーロウが話したという「お皿の話」をもう一度投げかけたことからも、それが伺えます。何も言わずにジョーンを送り出したマーロウの気持ちはどんなだったか。

 

終盤、シェイクスピアカトリック教徒たちによるバーリー卿暗殺計画を知ったマーロウは、ローズ座に集まった観客とシェイクスピアを助けようと奔走します。あんなによそよそしく、嫉妬心の塊のような顔をウィルに向けていたのに、彼はウィルを助けようとする。やっぱりウィルのことを人として、詩人として、想い、心配し、慕っていたのだろうなと思います。「お前には才能がある」「書いて書いて書きまくれ」と伝え、「作品がお前の存在となるのだ」と諭します。

これは舞台を観終わってから知ったのですが(恥)、シェイクスピアには「別人説」というのが昔からあるらしいのです。あまりにも本人の見解を示した言葉や、直筆の手紙などが少ないため、他の複数人の劇作家が共通のペンネームとして「シェイクスピア」を作ったのではないかという一説です。その真のシェイクスピアがマーロウだという説も存在しています。そうなると、「作品を作り続けることが、お前の存在となる」というマーロウの言葉はなんだか意味深に聞こえてくるような……そんな気がします。

 

ふと美しかったシーンを思いだします。ローズ座が火の海に包まれ、ウィルが絶望しながら、神に助けを乞うのです。「あぁ神様…助けてください…」と十字を切る姿が妙に美しく、儚く、胸が締め付けられました。唯一、隠していた信仰心をあらわにする場面ではないのでしょうか。

 

最後に、劇場の空き部屋でのあのシーン。シェイクスピアが顔を歪ませながら、自分の生い立ちをマーロウに語る場面は、悲痛でしかありません。私が行った公演では、雄也くんの涙が零れ落ちていました。シェイクスピア自身の心が、声となって震えとなってそして涙となって表現されていました。そこにいたのは雄也と光ではなく、まぎれもないシェイクスピアとマーロウでした。

 

 

 

最初に結論として言いましたが、雄也くんの演技が凄い(語彙力無)。こんなにも人が変わったような表情や、声の出し方ができると思っていなかった(何様)。雄也くんにはぜひ今後、舞台班としてJUMPを支えて欲しいなと思いました。

私が今雄也くんにやってほしい役ナンバーワンは、EndlessSHOCKライバル役「ユウヤ」です(いきなりミュージカルやらす)。楽しみにしています。

文一くんがEndlessSHOCKキャストに戻ってきてくれて、共演なんてしてくれたら、最高オブ最高すぎて、よくわからなくなってきました(ただの妄想)。

 

個人的にはG2さんが演出の舞台を見るのは2回目(1回目は浜中くん出演、舞台「ガラスの仮面」)で、自担たちが同じ演出家さんのもとで舞台をやるのがすごく嬉しかった。ユーモアの入れ方とか舞台の雰囲気も「ガラスの仮面」のときと似ているところがあったり、全く違う点があったり。あと、観劇から3日経っているのですが、シェイクスピアについて知りたい欲が日に日に増しています。本を探したり、ネットで検索しまくったり。自分では手を出そうとしない部分に興味を抱かせてくれるので、やっぱり演劇を観るのはやめられない!!という感じです。(寂しくなってはTwitterで #薔薇と白鳥の好きなところ を辿る毎日)

また、衣装の前田文子さんは、「マリウス」や「マクガワン・トリロジー」の衣装も手掛けているようで、俄然「マクガワン・トリロジー」への期待感が倍増しています(4日後の現場)。

 

 

最後に、圧倒的演技を見せてくれた雄也くん!お疲れさまでした!!

 

 

雄也…おそろしい子…!!!

 

 

 

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